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産地:カシャーン?
素材:ウール
大きさ:146×220(cm)
価格:お問い合わせください。
2枚一組の絨毯となります。
この絨毯は売却可能です。
この絨毯は、ドバイに絨毯を仕入れに行ったときに、現地の大手ペルシャ絨毯卸会社のオーナーさんのデスクの後ろに掛かっていた絨毯です。
ペルシャ絨毯の仕入れというのは、イランやその他地域の大手バイヤーさんのところに行って、現物をあれこれ見て、気に入ったものを買い付けてくるわけですが、そこには人間的な付き合いもあります。
いろいろ見せてもらって、気に入ったものがあれば徹底的に価格交渉して買うけど、気にったものが無ければ何も買わないとか、相手が売りたがっている物は怪しんで敬遠するとか、そういったドライな態度ばかり取っていると、厳しい目利きとして一目置かれるなんてことはなく、仲間外れにされて終わります。
したがって、買い付ける時は、絨毯1枚当たりの卸値ももちろんあるのですが、気に入ったものを買ったり、相手のおすすめも買ったり、それらをまとめてある程度のボリュームになってから価格交渉が始まります。
この絨毯は、最後の商談をまとめる時にオーナーさんの部屋に入ったら、立派なデスクの後ろの壁に掛けてあるのを父が非常に気に入って、それも売ってほしいといって買い足したものです。
当時我が家は家具店など10店舗ほどの売り場を任されていたのですが、どの店舗にも、実用性はさておき、目玉となるような綺麗な絨毯を置いておく必要がありました。
じゃあ、この絨毯2枚も含めて全部でいくらでいいよ、という提示を受けたわけですが、実はここで思惑が衝突します。
父は、この絨毯は確かにきれいだけど、ずいぶん吹っ掛けてきたなと感じたそうです。
ただ、全体的に見れば許容範囲だったため商談成立。
そして、帰国してから、どこの売り場に展示しようかなと思案しつつも、綺麗な絨毯だなと気に入っていたのでそのまま自宅で使い始めました。
そうしたら事件が起きます。
我が家に、イラン人のMさんという、ペルシャ絨毯の補修やメンテナンス専門の職人さんが遊びに来たのですが、居間に敷いてあるこの絨毯を見てびっくり。
「ずいぶんいい絨毯を家で使ってるんだね」
「綺麗でしょ」
「この絨毯どこで買ったの?」
「こないだドバイでAさんから買ったよ」
「どこ産の絨毯だって?」
「すごい古いから分からないけどカシャーン産じゃないかな、吹っ掛けられたのだけど気に入ったから買ってきた」
「自宅で使うつもりなの?」
「売るつもりで買ってきたのだけど、気に入ったから自宅で使う予定だよ」
「この絨毯、私の眼にはコレクションクラスに見えるけど」
「え!?」
「これ、カシャーン産じゃなくて、たぶんガズビン産だと思う」
「本当?」
「おたくの絨毯のなかで一番いいものなんじゃないの、これ」
「・・・」
最後のは未だに我が家も半信半疑ですが、すぐに自宅での使用は中止となりました。
どうやら、ドバイのA氏は吹っ掛けてきたんじゃなくて、たくさん買ったお礼に勉強してくれていたようです。
確かにこの絨毯、打ち込みはそこまで細かくないのですが、凝った作りをしています。
まず、色遣いが華やかで豪華絢爛なデザインなのは見てのとおりです。
そして、背景色の綺麗な赤が特徴ですが、背景は赤1色で他系統の色で様々な文様が織り込んであるという一般的なデザインではなく、赤を背景により薄い赤で花柄が織り込んであって、よくよく考えると非常に珍しい凝ったデザインです。
しかも、拡大してみると下記。
花柄模様の芯のピンク色の部分だけ実はシルクです。
大きい花しかハッキリとは見えませんが小さい花でも芯の部分はピンクのシルクが使われていて手の込んだ織り方です。
また、真ん中のメダリオン模様もよく見ると面白いです。
一見するとわかりませんが、このメダリオン模様は縦方向で見ると上下対称ではありません。
対称のようでそうではなく、文様自体も上と下ではわずかに違っていて、縦方向に方向性を持ったデザインとなっています。
完全対称に精密に作られた機械織り絨毯に対して、手織り絨毯の場合は、よく見ると多少歪んでたり柄の間違いがあったりして、そこら辺に手織り絨毯ならではの味があるなどといわれます。
しかし、この絨毯は、対称なデザインを手で織っていく内にずれてしまったのではなく、一見しただけではわからないようなレベルで意図的に対称なデザインからずらしてあって、それでいて全体としては統一感を持って仕上がっており、そこに面白さがあります。
そして、このわずかな「遊び」こそが、手織り絨毯デザインの神髄なのかもしれません。
他にも、高級絵画の額のような外側の枠のデザインや白系の色の使い方など、見れば見るほど凝った作りになっています。
ペルシャ絨毯の価格付けというのは難しいもので、普段見慣れていない一般の方にはわかりづらいものです。
ペルシャ絨毯のことはよくわからないけど、これは高い絨毯ですと言われた途端、急に良い絨毯に見えてくるなんてことも多いかもしれません。
しかし、気にする必要はありません。
プロだって同じです。