ハンティング百聞一見


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産地:クム
素材:ウール
大きさ:210×330(cm)

この絨毯は既に売却済みです。

私が子供のころ、我が家の居間にはハンティング柄の絨毯が敷いてありました。

私たち家族が毎日使う居間なので、それは使い倒された絨毯でもあったのですが、なかなかきれいな絨毯で家族で気に入っていました。

しかし、売れてしまい、我が家から去っていきます。

ペルシャ絨毯屋に育った中での思い出の一つに、自分の家で使用していた絨毯はよく売れるというものがあります。

考えてみるとそれは当然かもしれません。

専業のペルシャ絨毯屋ですら、絨毯の価格には頭を悩ますところで、ましてや趣味でペルシャ絨毯に興味を持った人はなおさらのこと。

ペルシャ絨毯屋が客を接待する自分の家の居間に敷いている絨毯に関しては間違いないと思うのも当然かもしれません。

実際に下手な絨毯は敷けませんし、手持ちの絨毯をあれこれ試した上で、きれいでかつ丁度良い絨毯を敷いています。

家に遊びに来たお客様から、ところでこの絨毯はいくらくらいなんですかという話がよく出ます。

当時敷いてあったハンティング柄の絨毯に、私と兄は非常に愛着を持っていたので(子供は絵柄が好きなので)売却時には猛抗議しました。

そうはいっても仕事は仕事。のはずが、家族の思いが伝わったのか珍しく父が断る。

しかし、最終的にお客様のどうしてもという熱意に負けて売却することになります。

父としても、悲しむ家族のために、代わりを見つけようとして奔走するものの、なかなか代わりになるハンティング柄の良い絨毯が見つかりませんでした。

仕方がないので、きれいな絨毯をいろいろ試すのですが、これじゃないという思いが募るばかり。

そんな家族の思いを受けて、父が必死に探してきてくれたハンティング柄の絨毯がこの絨毯。

居間に敷いた瞬間、これはすごい絨毯だなと思ったことを覚えています。

もっとも、自分の家の居間で使うような絨毯ではないと、すぐに家からは撤収されました。

私は、父の手伝いをしながらいつもペルシャ絨毯の値段に関しては不思議に思っていました。

しかし、この絨毯のおかげで、高い絨毯が高い理由は身をもって知っていました。

この絨毯こそが私にペルシャ絨毯の価格の理由を教えてくれた絨毯です。

何年も手伝いをして、たくさんの絨毯を広げたり畳んだりしましたが、このクラスのハンティング柄の絨毯は見たことなかったです。

自分の家に敷きたいと、実際にいろいろなペルシャ絨毯屋に足を運んでハンティング柄のペルシャ絨毯を探していた人にしか、この絨毯の価値はわからないかもしれません。

その後、この絨毯は売れてしまいますが、それなりの値段にも関わらず売れる時は即決でした。

一点ものの価値は、『出会い』を経験した人にしかわかりません。

まさに、手織りのペルシャ絨毯ならではですね。