アクバロフの砂漠に咲く花


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産地:イスファハン
素材:ウール
大きさ:150×220(cm)
価格:お問い合わせください。

2枚で1組の絨毯です。

この絨毯は売却可能です。

アクバロフという今は無き工房で作られた絨毯です。

この絨毯、コルクウールを使用していると思われる非常に繊細なデザインの絨毯です。

コルクウールというのは、子羊からとれる柔らかい部位の毛のため、希少性の高い原料となります。

コルクウールを使用した絨毯というのはペルシャ絨毯の中でも高級品とされますが、その理由はコルクウールの希少性だけではありません。

羊の毛というのは、5cmくらいあって、直毛というよりは縮れ毛でクルクル曲がっています。

だからこそ、それらをねじって繋いで毛糸にすることが出来るわけですが、短く柔らかいコルクウールというのは毛糸にしてもほつれやすく扱いづらいという性質を持っています。

細くて柔らかい毛糸ですから、高密度に打ち込む必要がありますし、ほつれやすさ故に絨毯を織るときに高度な技術が要求されることになります。

したがって、逆に言うと、コルクウールというのは、工房の中でもベテランの職人が担当し、高密度に丁寧に打ち込んでいく絨毯にのみ使用されるといっても過言ではなく、それを使用して作られた絨毯は高級品といえます。

もっとも、コルクウールを使用していれば高級品になるかというと、そこは難しいとも言えます。

なぜかというと、コルクウールと言っても、子羊の一定の部位のことであり、その部位も当然範囲があり、境界に行けば柔らかさも落ちます。

また、子羊にもいろいろあります。

つまり、コルクウールと一言にいってもクオリティは無段階で、コルクウールじゃない絨毯より自動的に高級になるわけでもありません。

結局、最終的に絨毯の価値を決めるのはその絨毯の出来栄えです。

私どもも何度か、ヒックマット・ネジャッドという今は無き超名門工房作のコルクウール製の絨毯を見たことありますが、ベルベットかと思うくらい繊細な出来で、こういう絨毯をコルクウールの絨毯と言うんだろうなと思ったことがあります(ラグサイズで数千万円しましたが)。

この絨毯は、そこまで行きませんから、「巷にあまたの自称コルクウール製ペルシャ絨毯はあれど、これぞ真のコルクウール絨毯だ!」とまで大見得は切れませんが、見て触れば素人でもわかるコルクウール製の絨毯です。

デザインも非常に繊細で、おしゃれな仕上がりです。

赤とクリーム色が中心の王道的なデザインではありますが、中心部のデザインが非常に凝っています。

よく見るとわかるように、真ん中はメダリオン模様と言ってしまいそうですが、明確な輪郭があるわけではなく、花柄模様が集まってメダリオンのようになっているだけです。

基調色のクリーム色がメダリオンの内部までしっかり入り込んでいて、花をイメージした個々の意匠が浮き上がるような、立体的なデザインとなっています。

しかも、何とも言えない紫っぽい青が効果的に配色されていて、まさに砂漠に咲く花といった感じのデザインです。

そして、中心部を囲んでクルクル回るラインは綺麗に描かれていて、こういう大きな視点で見たときのデザインは、手織りがゆえに歪みの発生が不可避のペルシャ絨毯において、製造者の腕を示すものですが、薄いクリーム色の背景に濃い色でしかも細い線で描かれていて、堂々たるデザインになっています。

デザイン的に珍しくはないですが、失敗したらデザイン全体がゆがんで見えるので、線が太かったり、背景色と同色で控えめなものが多かったりします。

こういった、繊細ながらもオリエンタル感のある独特の風合いは、コルクウールだからこそ出せたものと言って良いと思います。

この絨毯は2枚1組の絨毯です。

いい絨毯には2枚1組の物がよくあります。

なぜかというと、いい絨毯を作成するときにはデザインから気合が入っていますが、如何せん手織りで何が起きるかわからないため、保険の意味も込めて、織り機を横に並べて、2台同時進行で2枚作るわけです。

その結果、特段問題なく作成されれば、2枚1組のペアーの絨毯が誕生します。

今から数十年前の、まだバブルの余韻の残る東京でペルシャ絨毯の大きな展示会があったのですが、その時にユダヤ人のペルシャ絨毯商のH氏がこの絨毯を持ち込んできました。

私の父はすぐに欲しいとなったのですが、別の大阪の絨毯屋さんも欲しいとなりました。

まあ、ペアの絨毯だし、値段もそれなりだし、1枚ずつ購入で話はまとまりかけたのですが、一緒に展示会をまわっていたサザビーズで絨毯鑑定人をしているイギリス人の氏が、「この絨毯は綺麗だし、ペアで持っておいた方が良いんじゃないの」とアドバイスしてくれたために、「そうだよね」と、心とは裏腹に笑顔で業者間の取り合いを制し2枚購入したという絨毯です。

権威ある人がほめたから言うわけではないのですが、この絨毯、ありそうでないデザインの絨毯で、非常にきれいな絨毯です。

なぜペルシャ絨毯は高いのかという疑問がよくあり、たくさん見ると目が肥えると言いますが、こういった繊細な絨毯をじっくり見ると、いわゆるメダリオンデザインの絨毯を見る目は間違いなく変わると思います。