ペルシャ絨毯の値段はどうやって決まるのか


はじめに

ペルシャ絨毯の値段はどうやって決まるのかというのは、購入者が誰もが持つ疑問だと思います。

その点に語ってみようと思いますが、答えが無いの答えですと言ったような感じなるのは始めに付言しておきます。

まず、ペルシャ絨毯屋が絨毯を見た時には当然にチェックする項目があります。

産地
素材
色合い
文様
使用痕
等々

こういった各要素が価格に反映されているのは間違いありません。

しかし、こういったチェックリストを埋めていくと自動的に価格が算出されるかというとそんなことはありません。

その一番の理由は、ペルシャ絨毯が一点物だからです。

業者専用の卸売場に行って、「イスファハン産、製作は10年前で、色は青系、メダリオン模様の、織りの細かさ中程度の物を探してる」なんて言うと、それに対応するものが出てくるわけではありません。

組み合わせは無数にあり、目にできるのは限られた組み合わせのみです。

たくさんの絨毯が積み上げられている中、各業者、ほこりまみれになって、自分の気に入ったものを探してきます。

また、色合いやデザインなどは分析できるものではなく、使われている色が少ないよりは多い方が価値は高いですが、その程度の関係でしかありません。デザイン全体に力があるとか、色に深みがあるとか、そういった表現にならざるを得ません。

どうしても、ペルシャ絨毯の価格は主観的なものにならざるを得ないわけです。

現地人の絨毯屋

イラン人をはじめとして、中近東の人が経営して、卸ではなく直接小売りするペルシャ絨毯屋も最近は多くなりました。

現地出身のペルシャ絨毯屋は当然現地の事情に詳しいです。

日本人は皆細かいですから、気に入った絨毯があっても、その絨毯がなぜその値段なのか知りたがります。

その点、イラン人の絨毯屋は手慣れたもので、産地の風土や歴史、作られた工房の特徴、文様の意味、柄に登場する動植物の意味などを語り、チェック項目の積み上げ方式で価格が決まっているかのように、購入者を納得させてくれます。

横から見ていて、あまりの冗舌さに苦笑も漏れますが、上手いものだと素直に感心します。

一点物なので意見が分かれることは重々承知でも、自分が買うものについては、どうしてその値段なのか納得したい人は、日本人ではなく、現地人のペルシャ絨毯屋から購入するのをお勧めします。

いろいろと話が聞けて納得度は高いと思います。

しかし、実際には、見た目の印象や経験と勘で決めているのが実情です。

例えば、日本で商売する以上、日本人が好みそうなものは当然高値が付きますし、そうでないものは安価になります。

売れる売れないを抜きにした、客観的な「ペルシャ絨毯の価値」というものはコレクションクラスにならない限り無いと言えます。

日本人の絨毯屋

日本人のペルシャ絨毯屋になると価格の見解の相違は大きくなります。

そもそも、大学を卒業すると同時にペルシャ絨毯の世界に足を踏み入れた日本人のペルシャ絨毯屋なんていません。

皆、ほとんどがインテリア業界を経て、縁あって、ペルシャ絨毯屋をやっていたりします。

したがって、イラン人のペルシャ絨毯屋との大きな違いですが、日本の家、居間なり書斎なりに具体的なイメージを持っているのが特徴です(中近東と日本では家のつくりやインテリア感覚は全く異なります)。

インテリアの経験を通じて、こういう部屋にはこういう絨毯が合う、こういう絨毯はなかなかない、といった経験がかなり値付けに入ってきます。

したがって、値付けはまさに一点物の世界で、「和室にはこういう絨毯が合うのだけれど、なかなか出回らない」といった思いがあれば、それなりの値段を付けます。他の絨毯屋を探してもないはずと思っているので、そこが価格に反映します。

したがって、その絨毯屋と同じイメージを共有していれば、価格には納得できます。複数の絨毯屋をめぐって、やっぱりこれが一番と思うものがあれば、おそらくそれなりの値段が付いているはずです。

その反面、イメージしているインテリアが違うと、全く値付けが理解不能となるはずなので、気に入ったものが安く買えるというのでない限り、買わないほうが良いと思います。

ペルシャ絨毯歴の長く信用できそうなこの人が高いと言ってるんだから価値のあるものなんだろう思っても、そもそもの価値が主観的なものですから、全くあてになりません。

具体的な使い方を考慮した上で納得できるかどうかが全てと言っても過言ではありません。

補足

最近は、工房をついて言及する業者が多くなりました。これは、「xxx工房で作られた絨毯です」といった説明をしばしば見受けます。

しかし、工房が意味合いを持つのは、コレクションクラスです。

日本の着物に例えれば分かるように、「この着物は熟練職人を集めた着物ドットコム直営の八王子工場で作られた着物です」なんて言ったところで、そこに何の価値もありません。

終わりに

このように、ペルシャ絨毯の値段の理由というのは、無いわけではないのですが、具体的な絨毯を目の前にした場合に、その絨毯の値段はかなり売り手の主観が影響しているものです。

高いから別のところで買おうとしても、よそでは見つからないからこそ、その値段がつけられているともいえます。

したがって、この値段でもこの絨毯を自宅の居間に敷きたい等、自分なりに価格に納得して買うのが一番大事です。

価格に納得してないけど、どこどこ工房製だから高いらしいとか、どこどこ産だから高いらしい、いずれ値上がりするらしい(100%嘘)、要らなくなったら同じ値段で売れるらしい(100%嘘)、という買い方はできる限り避けるべきと思います。